黄金色に輝く、透き通った「池田屋」のところてんを、つるんとひと口すする。なめらかな喉ごしでクセのない上品な味わいは、蒸し暑い夏にとびきりの清涼感を運んでくれる。
ところてんと言えば、原料となる天草が豊富にとれる伊豆半島が有名で、ぷるんとした口当たりと、弾力の強い歯ごたえのあるところてんが大半を占める中、「池田屋」のところてんは雑味がなく、やさしい食感が印象的。五代目店主の長坂光司さんによると、天草は産地によって硬さが異なるので、使う天草によってでき上がりの食感にも違いが生まれるのだとか。
「池田屋」では試行錯誤の上、10年かけてたどり着いた独自の配合により、紀州や志摩地方のやわやかい天草と、伊豆産の硬い天草など4種類をブレンドすることで、粘りとコシがありながら、独特の心地よい舌ざわりを生み出している。
「日本古来の食べ物なので、地域による違いや好みもあると思います。池田屋としては、この地域で昔から親しまれている、やさしい味わいを追求していきたい。そして、何よりも自分が食べたいものを作ることがポリシーです」と話す長坂さん。その味を守るため、気の遠くなるような工程を経て、渾身のところてんを作り上げている。
天草に絡みつくように付着している海の垢やゴミを洗い落とすため、専用の洗浄機で1回あたり15分程度の洗浄を、天草の量に応じて7~10回繰り返し行う。一回一回水を替えながら、茶色く濁っていた洗い水が、最後には透明で飲める状態になるまで続けられる。この工程におよそ半日を費やしてていねいに洗うことで、見た目の透明感やツヤが生まれ、磯臭さのない洗練された味わいに仕上がるのだ。一晩置いてあく抜きをした後、程よい粘りを出すために、圧力をかけずに時間をかけてじっくりと煮出すのも長坂さんのこだわり。
濃度を均一にしながらパットに注ぎ、さらに一晩常温でゆっくり固める。翌朝固まり具合を確認しながら、木製の突き器を使ってひと塊ずつ手作業で突き出すと、3日がかりで、ようやくところてんが完成。突き器から出て来たところてんを一本手に取り、粘り度、なめらかさをチェック。口に入れて食感や風味など、その日のでき栄えを確認する。「うん、おいしい。この透明感、この味わいに仕上がった時が一番うれしい」と破顔する長坂さん。「うちのところてんは、水に浸ると見失うほど透き通っているんですよ」と誇らしげに話してくれた。
「池田屋」は明治15(1882)年創業の歴史あるこんにゃく屋。長坂さんは五代目として家業を継いだのを機に、岡崎産のこんにゃく芋栽培など地産地消への取り組みをはじめ、「池田屋」らしい商品づくりを模索する中で、現在のようなところてん作りに行きついたのだとか。
「自分に嘘をつかず、いいものを地道に作ってさえいれば、きっといつかみなさんに知ってもらえると信じています」と穏やかにほほ笑む長坂さん。新登場のすっきりとした味わいの檸檬みつや、三杯酢、黒みつ、梅みつなど味のバリエーションもいろいろ。クセのない味わいを生かして、宇治金時風のデザートにするなど、若い世代にも親しんでほしいと新しい食べ方も考案中。カロリーが低く、ダイエットにも最適なので、体思いのおやつとしてますます出番が増えそうだ。
池田屋
岡崎市井田南町8-7
0564-21-1512
http://www.ikedaya-okazaki.jp
営業時間/9:00~17:00
休業日/日曜
アクセス/ 東名高速 岡崎ICより約15分