都会的なスマートさがありながら、使うシーンのイメージが次々と浮かぶ生活感がある器——。土岐市を訪れた際、初めて出会った「KANEAKI SAKAI POTTERY」の器からは、気取らない素朴さと所有欲をくすぐるデザイン性の高さが感じられた。
「KANEAKI SAKAI POTTERY」が生まれた金秋酒井製陶所は、美濃焼の産地で1904(明治37)年に創業。大量生産の陶器を手掛ける製陶所でありながら、絵付けや釉薬掛け、仕上げなど肝となる工程は手作業にこだわることで、品質の高い美濃焼を作り、信頼を構築してきた。
そこに「KANEAKI SAKAI POTTERY」のベースとなる金秋酒井製陶所デザイン室が誕生したのは、2013年(平成25年)のこと。京都で陶芸を学び、ハローワークでモノづくりの現場を探していた河野季菜子さんが金秋酒井製陶所へ見学に訪れた時、その才能とセンスに惚れ込んだ社長の酒井教雄さんは“彼女のような新しい世代の感性を、カタチにできる現場をつくりたい”と新ブランドの設立を決意。翌年には、同じ京都出身の岸弘子さんが加わり、若い女性2人によるチャレンジが始まった。
伝統ある製陶所ならではの設備や環境を活かし、職人としての技術力やノウハウを吸収していった2人は、それぞれの個性を投影できる作品づくりを模索。これまで隔たりのあった陶芸家と製陶所という境界を超え、手づくりの魅力と、一大産地ならではの工場の利点を活かした新たなスタイルとして、「KANEAKI SAKAI POTTERY」の活動を広げている。
「よどみなく、ひっかかりのない形」を追求しているという河野さんの作品は、シンプルでありながら、使い手が大切にするライフスタイルへのこだわりをしっかりと伝えてくれる。「カッコイイだけではなく、道具として使い続けられる普遍的なものを」と話すのは岸さん。「私たち自身が使いたいと思える美濃焼を作ることで、陶磁器の魅力を伝えたい」と語る2人。その器の一つひとつは、気取ることなく、日々の一瞬一瞬と丁寧に向き合いたいという思いを実現してくれる。
KANEAKI SAKAI POTTERY(カネアキサカイポタリー)
金秋酒井製陶所 岐阜県土岐市泉町久尻1173-1
0572-55-2736
※工場見学は現在行っていません
http://kaneaki.com